コラム

引っ越ししました!

8月に当財団は同じ建物内の8階へ移転しました。

私は財団に来て間もないので松田妙子前理事長にはお会いしたことはありませんが、日々この財団に携わり、前理事長が自らの行動をもって「学び続けること」や「社会と関わりを持つこと」の大切さを唱えていたことは理解していました。
この度の引っ越しにあたり、書籍や前理事長が掲載されている新聞記事などを整理しながら、改めて松田妙子前理事長の軌跡を辿ることとなりました。

そして、昔の記事や資料を読んでいるうちに、松田妙子前理事長の見据えるものが何十年も前から一貫して変わらず現代に通じていることが分かってきました。

1988年に発行された情報誌「ライフ・ラーニング」創刊号には、今も変わらない当財団の理念が。

前理事長は、33歳でアメリカから帰国後、自分の家を建てるにあたり不便を感じたのをきっかけに、2×4工法を日本に紹介し住宅開発に携わりました。そして、質の良い家を建てるには、質の良い工務店経営者を育てる必要があるとの思いから「住宅産業研修財団」を設立しました。2003年には、日本の伝統工法の継承と若き大工職人の育成を目的とした「大工育成塾」を開塾し塾長に就任。2015年の閉塾までに育てた大工は、約600人にのぼります。

そして、56歳のとき、生涯を通じ学び続けることの大切さを伝える、この「生涯学習開発財団」の設立に関わり、3年後には理事長に就任しています。

私がこの財団の活動の中でも、最も感銘を受けたのが「50歳以上のための博士号取得支援事業」です。この支援事業は、前理事長が当財団での活動を続ける中で、自らも71歳で東京大学工学博士号を取得したことを機に創設されました。この10年で87名の方を支援しており、すでに50名もの方が実際に博士号を取得しています。

多くの方から「この支援のおかげで勇気をもらい頑張り続けることができた。」「この支援があったから最後までやり遂げられた。」「財団の支援を受けることで、さまざまな分野の50歳以上の人が頑張っているのを感じ、さらに励みになる。」などのお声を頂いておりますし、こうして得た達成感や自信は皆さんの生きる原動力にもなると思います。松田妙子前理事長の類まれな思考力とバイタリティ溢れる行動力に、きっとたくさんの方が勇気をもらい、共感し、救われ、感謝してきたであろうことを感じずにはいられませんでした。

松田妙子著「家をつくって子を失う」(写真右)「親も子も後ろ姿を見て育つ」(左)
鈴木れいこ著「旺盛な欲望は七分で抑えよ―評伝 昭和の女傑松田妙子」(中央)

前理事長の30年以上も前から全く色褪せない考え方や思いは、人生100年時代と言われている今日にも通じています。これからは、前理事長の思いを引き継ぎつつも、新たな財団の歴史を私たちが作っていかなければと気持ちを新たにし、止まっていた引越し作業の手を再び動かしました。

[生涯学習開発財団事務局 比留間]