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鬼の学び ―鬼塚忠のアンテナエッセイ―

14. 新聞記者に学ぶ「誰でも伝わりやすい文章を書く技術」 14. 新聞記者に学ぶ「誰でも伝わりやすい文章を書く技術」

白鳥和生:日本経済新聞社 総合編集センター調査グループ次長

誰でも文章を書くことはできる。しかし、わかりやすい文章を書くことは容易でない。そう思われがちだが、現役の新聞記者によると、誰でも、数字・事実(ファクト)・ロジックの使い方の簡単なコツを覚えるだけで、伝わる文章を簡単に書けるという。この7月に『即!ビジネスで使える、新聞記者式伝わる文章術』(CCCメディアハウス)を上梓した白鳥和生氏にそのコツを聞いた。

気負わず、文章の「型」を身につける

鬼塚 私たちは日ごろ日本語を使っているはずなのに、書くとなると、なぜうまく書けないのでしょうか?

白鳥 うまく書こうという気負いがあるからではないでしょうか。パソコンを前に固まってしまった、ペンが進まずに考え込んでしまった。そんな経験を持つ人は、「うまく書かなければ」という呪縛にとらわれているのです。

私自身も学生時代の国語の成績は自慢できるものではありませでした。新聞社に入った当初は、気負いすぎて、難しい言い回しを使おうとしたり、変にテクニックに走ったり。先輩に「よくダメ出し」されたものでした。でも、場数を踏むことで、文章の「型」を身につけていきました。

文章を書く能力は生まれつきのものではありません。少しリラックスして、書き始める前に、何を伝えたいかを整理してみることが大切です。最も伝えたいポイントが決まれば、しめたもの。伝えたいポイントを最初に書き、ポイントを主張した理由や、それにまつわるエピソードを順に書いていけばよいのです。ただそれだけです。

鬼塚 多くの人はうまく書こうとしすぎなのですね。

白鳥 そうだと思います。「伝わる」とは「わかる」ということです。わからないのは、書き手が書きたいものと、読み手が読みたいものにズレがあるからです。よい文書とは、読み進めるスピードと、理解するスピードの歩調があっているもの。つまり読み返すことがないものであり、それは読み手の疑問に答えている文章だと思います。

たとえば大学生向けに「新聞記者は魅力的な職業だ」ということを訴える文章を書くとしましょう。一文目にそれを書いたら、次に「なぜ新聞記者は魅力的なのか」という読み手の疑問に答えて、「なぜなら名刺1枚で様々な人に会えたり、自分の仕事が『記事』という形で残ったりするからだ」という理由を述べます。

次に「でも、きつい仕事じゃないの」という声も聞こえてきそうですから、「確かに、大きなニュースを取材しているときは夜が遅く体力的に大変です。でも、年がら年中、そういったことは続くわけではありませんし、通常は取材のアポイントも自分の都合で調整できます」と答えます。そして「人が好き、好奇心が旺盛、社会貢献できていることを日々の仕事で実感したい人は、ぜひ、新聞記者を就職先の一つに考えてみてください」と書き進めます。

伝わる、わかる文章とは?

白鳥 伝わる、わかるとは流れがスムーズなことです。それがイコール論理的だということです。ロジカルシンキングなどといった難しいことはさておき、スムーズに理解できる文章は、流れに違和がないロジックと、客観的事実であるファクト、数字の3つがそろっています。

鬼塚 そのファクト、数字、ロジックとはなんですか?

白鳥 ファクト、数字、ロジックは新聞記事の基本です。読み手に共感してもらうための前提になるのが納得感です。文章やプレゼンテーションの内容に納得のいく情報が入っているかどうか。それがカギを握ります。納得がいく情報とは、「ファクト(客観的事実、事実関係)」にほかなりません。ファクトは理想や噂、作り話ではなく、事実に基づいたもの。合理的で主観が入り込む余地がなく、「データ」にほかならないという研究者もいます。そのようにファクトと数字(データ)は切り離せないものです。「人出が多い」という場合、1,000人とか3,000人とか具体的な数字を挙げ、前の年に比べて50%増えたなどと表現した方が、読者もイメージがつかめます。

繰り返しになりますが、ロジック、論理的とは「わかる」ということです。その文章は、最初から最後まできちんとつながっているかが重要です。わかる文章を書くためには、「過不足のない」文章を心がけることです。つまり、「なるべくシンプルに言えないか」を考えるのです。

言い換えると、わかりやすい文章を書くのは、「頑丈な家」をつくるのと同じです。まず土台を固めて柱を立てていきます。土台が結論(主張)であり、柱や梁などの構造軀体がそれぞれのファクト(客観的事実)です。ですから文章も結論を先に書く。その後に結論を補強するためのファクト、具体的には「理由」「事例」「詳細」をもってくる。理由や事例が複数あると、柱が増えて「頑丈な」文章ができあがるわけです。

鬼塚 頑丈な文章だとよく伝わるのですか?

白鳥 ファクト、数字、ロジックは、年齢や性別、国籍の違いを超えて、誰もが納得しやすい論拠です。一般に強い根拠とは、数字やデータ、出所がはっきりした調査結果、公的機関や専門家が保証した資料や発言など。こうした確かな根拠を提示できれば、自説に説得力を持たせることができます。論理的な思考には、ファクトが必要不可欠です。先入観や主観を捨てて、事実を見つめて判断する習慣をつけたいものです。

提案や企画が通る文章とは?

白鳥 簡潔でわかりやすい文章を書いているのに、提案や企画が通らない。そんな人は、自分の主張や思いを一方的に書いている場合が多いようです。「この商品には3つの特長がある」などと簡潔で論理的に書くことは重要です。とはいえ、いくら優れた特長でも、顧客がそれを必要と思うかはわかりません。
 また、「これを書いたら相手はどう思うだろうか」「こんなことを書いたら相手の気分を害するのでは」というように、自分本位ではなく、相手の感情や感覚を意識して書くことも必要です。

鬼塚 たとえばどんなふうにするのですか?

白鳥 たとえば、ニュースリリースを考えましょう。「2021年10月1日、当社はスナック菓子の新商品「ダブルパンチ」を発売いたします。この商品の特長は、消費者庁から特定保健用食品(トクホ)の許可を受け、ポテトチップスに糖分と脂肪分の吸収を抑える機能を持たせたことです。想定店頭売価は250円。ぜひ一度お取り扱いをご検討ください」という文章があります。

これはこれで成り立っていますが、「コロナ禍の巣ごもり需要で、菓子カテゴリーは堅調な売れ行きを維持しています。ただ、ドラッグストアなどディスカウント業態の台頭で、価格競争が激しく、売り上げ並びに粗利の確保に課題を抱えていると拝察します。当社が2021年10月1日に発売する「ダブルパンチ」は貴社の課題解決にお役立ちできます。新商品はポテトチップス初の特定保健用食品(トクホ)で、想定売価が250円と、既存商品に比べ100円ほど高い設定になっているからです。粗利も十分確保でき、売り場効率の改善につながります」としたらどうでしょう。

企画書などに、自社商品・サービスの特長をいくつか列挙して書けば、顧客が自分たちのニーズに合った特長に注目してくれる場合もあります。しかし、顧客自身の中でニーズが顕在化していないこともあります。事前の打ち合わせなどから課題を汲み取り、その課題の解決につながる特長をアピールすれば、顧客の心に響きやすくなります。

鬼塚 これで誰でもわかりやすい文章が書けそうですね。

白鳥 文章は読んでもらえなければ役割を果たしません。ビジネス文章はその性格上、読むのが面倒なものです。それを読んでもらわなければならないわけですから、当然、内容や書き方を考えなければなりません。論理的な文章を書く訓練で最もいいのは、他人に読んでもらうことです。会話から文章を起こしていくのも、流れがスムーズな点でわかりやすい文章を生み出す簡単な方法です。

鬼塚 ありがとうございました。

『即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術』白鳥和生 著(CCCメディアハウス)

白鳥和生(しろとり かずお)
日本経済新聞社 総合編集センター調査グループ次長。1990年に入社し、流通、外食、食品などの取材を長く担当。『日経MJ』デスクなどを経て、2021年から現職。2020年に博士号(総合社会文化)を取得。

鬼塚忠(おにつか ただし)
1965年鹿児島市生まれ。鹿児島大学卒業後、世界40か国を放浪。1997年から海外書籍の版権エージェント会社に勤務。2001年、日本人作家のエージェント業を行う「アップルシード・エージェンシー」を設立。現在、ベストセラー作家を担当しながら、自身も執筆活動を行っている。
著書:『Little DJ』(2007年映画化)、『僕たちのプレイボール』(2012年映画化)、『カルテット!』(2012年映画化)、『花戦さ』(2017年映画化。日本アカデミー賞優秀作品賞受賞)など多数。
http://www.appleseed.co.jp/about/

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