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インタビュー27 七宝 吉村芙子 インタビュー 27
七宝 吉村芙子

七宝に新たな表現を生み出す数々の独自技術七宝に新たな表現を生み出す数々の独自技術

吉村芙子(よしむらようこ)氏は師につかず、独学で七宝に取り組んだ。染織、陶芸、ガラスなど他分野の技法を積極的に取り入れる一方で、古い泥七宝の技法も活かし、自由で斬新な七宝表現を生み出している。

聞き手上野由美子

七宝 吉村芙子
吉村芙子氏
1940年
神奈川県鎌倉市に生まれる
1959年
七宝制作の道に入る
1975年
第3回リモージュ国際七宝芸術展入選(フランス)
1976年
第1回個展開催(以後国内外で多数開催)
1977年
第24回日本伝統工芸展 初入選
1993年
世界の七宝作家23人展(フランス)
1994年
第41回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞 泥釉有線七宝花瓶「花暦」
1995年
第42回日本伝統工芸展 日本工芸会奨励賞 泥釉有線七宝合子「花時めく」
2003年
第23回伝統文化ポーラ賞 優秀賞
2006年
グルジア国際七宝展入賞
2014年
日本伝統工芸展60回記念〈工芸からKOGEI〉に出品
現在
日本伝統工芸展特待者、NPO法人日本七宝会議理事長

誕生日の贈り物に心を動かされ七宝制作へ

――独学だったそうですが、七宝との出会いは。

 中学生の時、父から誕生日に七宝焼の指輪をプレゼントされたのです。とにかく綺麗で、誰がどうやってこんな美しいものを作っているのだろうかと、七宝への好奇心が沸き起こったのです。

 数年後、藝大に進んだ友人が授業で作った七宝焼を持っていたので、とっ捕まえて根掘り葉掘り聞いて、まずは道具と素材を揃えることから始めました。専門店でバーナー、ふいごなどを購入。釉薬の材料は父が輸入してくれて、乳鉢ですり潰して粉状にしました。とにかく何度も何度も焼いて、何度も何度も失敗しました。先生がいなかったので毎日様々な方法を試みました。この時期の姿勢が、染織や陶芸、ガラス工芸など他の分野の技法を取り入れた私独自の作風につながったと思います。

――そうした独自技術は作品にどのように生かされていますか。

 美術評論家や七宝愛好家からも「どうやったの?」とよく聞かれます。通常は有線七宝といって、0.2〜1.5ミリ幅の帯状の銀を立てて貼って、囲まれたエリアに単色の釉薬を盛っていきます。私が開発した友禅七宝は、調合した中間色の釉薬を用い、下地に筆で直接絵柄を描いて、友禅染めや水墨画のような濃淡を出します。有線でも私の作品では、花びらなど数千ピースの銀線のパーツを用いることもあります。一つひとつ曲げてピンセットで貼っていくので根気が要ります。

 泥七宝は光沢を押さえた釉薬で、落ち着いた表情を出しています。釉薬の質が悪かった昔の作風を、逆に味わいとして活かしました。他にも、わざと生焼けにしたり、銀粘土や箔を使ってみたり、最近は金の雲母とベネチアガラスを用いてみたりと、遊びながら実験しています。

パリ市長に手紙を出して実現したお城での展覧会

――特に海外で評価され活躍されていますね。

 七宝制作が軌道に乗ってきた1970年代に、パリやリモージュに行って、作品展やお店をたくさん見ていたのですが、当時パリ市長だった、後の大統領シラク氏に手紙を書いたのです。そうしたらブローニュの森のお城で展覧会ができることになり、大盛況でした。それがきっかけで北京にも呼ばれ、100人の作家に声をかけて企画。その後も、カナダ、アルゼンチン、アメリカなどに呼ばれ、出展や個展をやりました。今年4月には台湾で、日本、アメリカ、中国を加えた4か国の作家展を開催する予定で、審査員を依頼されています。

人とのつながりで磨く高いオリジナリティー

――七宝とは思えない作風の数々に引き込まれます。

 リモージュに出すときに言われたのは、「日本人にしか作れないものを出してほしい」ということでした。国内でも三越や和光で個展をさせていただいて、「なぜ私に声をかけてくださるんですか」と聞いたら、「他の人がやってないことをやっているからですよ」と言われました。私の場合は、先生につかないで自由にやったことが良かったのでしょう。

 先生に教わる代わりに、人とのつながりでたくさんのことを学びました。私の作品を使ってくださって、展覧会を15年支援してくれているお客様がいますが、工芸に詳しくいろんな質問をされます。常に勉強しておかなくてはいけないし、人に伝える力もつきました。並河靖之さんの作品の復元を頼まれたときも、特殊なカメラで並河さんの作品を見たらすごいんです。当時は電気炉がなく炭火で焼成していた頃なのに、銀線は細く0.3ミリくらいで、細かい絵柄のところに100色くらい使っていました。仕事からも学んでいます。

――若い人の育成はどうされていますか。

 私の父はものづくりの道に進みたかったけど叶わなかったことから、私に対してすごく支援してくれました。今度は私が若い人を支援していかなければと思っています。私が理事長を務めている日本七宝会議は、2007年にNPO法人化して、主催する「国際七宝ジュエリーコンテスト」は今年で31回を数えます。若い人が、人とつながっていける機会を提供したいです。

聞き手:上野由美子
古代オリエントガラス研究家。UCL(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン)考古学研究所在籍中。2012年国際日本伝統工芸振興会の評議員。ARTP副団長として王家の谷発掘プロジェクトに参加(1999年〜2002年)。聖心女子大学卒業論文『ペルシアガラスにおける円形切子装飾に関する考察』、修士論文『紀元前2000年紀に於けるコア・ガラス容器製作の線紋装飾に関する考察』ほか、執筆・著書多数。

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